フッ化水素の猛毒性と半導体に不可欠な理由|2026年最新動向まで徹底解明
フッ化水素が世界的なニュースの主役となったのが、2019年7月に日本政府(経済産業省)が発表した「対韓輸出管理の運用の見直し」でした。レジスト、フッ化ポリイミドとともに、高純度フッ化水素の包括許可対象から個別許可対象への切り替えが行われた出来事です。
当時、サムスン電子やSKハイニックスといった韓国のメガ半導体メーカーへの供給懸念が報じられ、韓国政府は「素材・部品・装備の国産化」を掲げて巨額の国家予算を投じました。ソウルブレーンなどの韓国素材メーカーが低〜中純度の液体フッ化水素の国産化に成功したと発表し、日韓の産業構造は激変したかのように伝えられました。
しかし、産業の実態を冷徹に検証すると異なる現実が浮かび上がります。
汎用的なレガシー半導体やディスプレイ向け、あるいは比較的精製が容易な一部の工程では韓国国内調達や中国製への分散が進んだものの、先端微細プロセスに用いる「超高純度ガス状フッ化水素」や「12Nクラスの最高峰液体フッ酸」については、歩留まり維持の観点から日本製品の代替が極めて困難であることが浮き彫りとなりました。日本のメーカーも韓国現地に合弁会社や製造子会社を設置して現地供給体制を整えるなど、強固な相互依存関係が再構築されました。
2023年に日韓首脳会談を経て輸出管理措置が解除され、グループA(旧ホワイト国)への復帰が完了したことで、形式的な摩擦は収束しました。そして2026年現在、世界の関心は「AI半導体特需」と「地政学的サプライチェーンの再構築」へと完全にシフトしています。
TSMCの熊本工場(JASM)の本格稼働拡大や、日本の最先端半導体受託製造を目指すRapidus(ラピダス)の進展、さらに米国CHIPS法を受けた各国の工場建設ラッシュにより、高純度フッ化水素の需要は過去最高水準で推移しています。サプライチェーンの強靭化を目的として、日本企業は国内生産能力の増強を進めるとともに、米・台などへの分散投資を加速させています。