国民栄誉賞女優・森光子の足跡と伝説舞台『放浪記』知られざる裏側
作家・林芙美子の半生を描いた代表作『放浪記』。1961年の初演から数えて2017回という驚異的な単独主演記録は、演劇界の金字塔として今も燦然と輝く。しかし、その輝かしい記録の裏には、観客の想像を絶する肉体的・精神的闘いが隠されていた。
主人公・ふみ子が極貧の中で原稿用紙に向かい、苦悩の末にでんぐり返しをする名シーン。年を重ねるごとに増す身体的負担に対し、彼女は日々の筋力トレーニングを欠かさなかった。スクワットを毎日数百回こなす凄絶な自己管理。それは「チケットを買って足を運んでくださるお客様に、完璧な姿を見せたい」という執念の表れだった。舞台袖で見守るスタッフ陣が息をのむ中、彼女は毎公演、自らの限界を塗り替えるように舞台を跳ね回っていたのだ。