旧居留地38番館の歴史と現在|ヴォーリズ名建築が放つ品格と見どころ

今注目を集めている 旧居留地38番館の歴史と現在|ヴォーリズ名建築が放つ品格と見どころについて、詳しいまとめをご紹介しています。

旧居留地38番館の最大の魅力は、古典主義の端正な美しさと、ヴォーリズ特有のヒューマンスケールな温もりが共存している点にあります。様式としては、20世紀初頭のアメリカで流行した「アメリカン・ルネサンス(新古典主義様式)」を忠実に再現しています。

建物の正面(ファサード)を見上げると、まず目を奪われるのが4本の堂々たるイオニア式オーダー(円柱)です。柱頭には優美な渦巻き模様(ヴォリュート)が刻まれ、建物を垂直方向に引き締めています。外壁は重厚な御影石の石積みと擬石モルタル洗い出しによって構成され、1階部分の力強い「ルスティカ積み(石の表面を粗削りに残す手法)」が、強固な銀行建築としての威厳を物語っています。

一方で、細部に視線を移すと、厳格な古典主義の中に繊細な装飾が散りばめられていることに気づかされます。

  • アーチ窓とアイアンワーク:1階の大きな半円アーチ窓には、幾何学的でありながら優美なカーブを描く鋳鉄のグリル(格子)が嵌め込まれており、光と影の美しいコントラストを生み出しています。
  • コーニスとパラペットの蛇腹彫刻:軒回り(コーニス)には、古代ギリシャ・ローマ神殿を思わせるクラシカルな繰形(モールディング)が巡らされ、空との境界を気品高く切り取っています。
  • 水平ラインの強調:階層ごとに明確な帯(胴蛇腹)を通すことで、威圧感を抑え、歩行者の視線に心地よい安定感をもたらしています。

教会や学校、個人住宅などを多く手掛けたヴォーリズ建築の中で、本格的な商業銀行建築として現存する事例は極めて希少です。威圧的になりがちな銀行建築において、通りを行き交う市民に圧迫感を与えない均整の取れたプロポーションは、ヴォーリズの設計思想が息づく決定的な見どころと言えます。

関連記事