生ハムの原木で後悔する前に知るべき白カビ・保存の真相
生ハム原木の醍醐味である「口の中でとろける食感」を生み出すには、適切な道具と正しいカッティング技術が欠かせません。家庭にある三徳包丁やブレッドナイフで代用しようとすると、怪我のリスクが高まるだけでなく、断面がボロボロになって肉を無駄にしてしまいます。
まず不可欠なのが、原木を万力のようにがっしりと挟み込む「ハモネロ」と呼ばれる専用固定台です。原木を削る際には強い摩擦力がかかるため、安価で軽量なプラスチック製や細い木製の台では、作業中に台ごとグラついて非常に危険です。台自体の重量が2kg以上あり、底面に滑り止めが施された剛性の高いハモネロを選ぶことが、安全で美しいスライスへの第一歩となります。
スライスには、刃渡り25〜30cm前後の細身で柔軟にしなる専用生ハムナイフを用います。切り方の極意は「力を入れず、刃の重みと長さを利用して前後に長くスライドさせる」ことです。刃を肉と平行に保ち、向こう側が透けて見えるほどの薄さ(約1mm以下)に削ぎ落とすのが理想です。薄く切ることで表面積が広がり、舌の上に乗せた瞬間、体温で上質なオレイン酸の脂が溶け出して豊かな香味が広がります。
骨の周りまで削り進んで肉が薄くなってきたら、スライスを諦めてサイコロ状にカットし、アヒージョやパスタの具材として火を通す料理に転用します。さらに、肉を取り終えた後の骨からは極上の出汁(カルド)が取れます。適当な大きさにノコギリ等で切り分け、香味野菜と一緒に数時間煮込めば、本格的なスペイン風スープや煮込み料理のベースとして最後の一滴まで使い切ることができます。