四国八十八ヶ所で人生が変わる真相|費用・日数と逆打ちの盲点を徹底解剖
お遍路の世界には、第88番札所から番号を逆に遡って第1番を目指す「逆打ち(ぎゃくうち)」と呼ばれる巡礼法が存在します。一般に「うるう年に逆打ちをすると、順打ちの3倍のご利益がある」と広く信じられていますが、この伝承の発祥と現場の実情には大きな隔たりがあります。
逆打ちの起源は、平安時代初期の伊予の豪商・衛門三郎(えもんさぶろう)の伝説に由来します。強欲非道だった衛門三郎は、門前に托鉢に訪れた弘法大師・空海を竹ぼうきで追い払い、大師が持っていた鉢を8つに叩き割ってしまいました。その後、愛する8人の子供が次々と病死。己の罪の深さに気づいた三郎は、大師に直接会って許しを請うため、財産を処分してお遍路の旅に出ました。しかし20回巡礼しても追いつけず、「逆に回ればどこかで大師に対面できるはずだ」と発想し、うるう年に初めて逆打ちを決行。四国山中の難所で力尽きようとしたその瞬間、ついに弘法大師が現れて罪を許され、三郎は息を引き取ったと伝えられています。
この伝説から「うるう年の逆打ち=大師に出会える=ご利益が何倍にもなる」という俗信が広まりました。しかし、現場の記者目線で指摘しなければならないのは、逆打ちが抱える圧倒的なリスクと難易度です。
四国遍路のルート上にある道標(石碑、看板、赤い遍路シールの目印)の9割以上は、第1番から第88番へ向かう「順打ち」の歩行者目線で設置されています。逆打ちで歩く場合、背後を振り返らないと道標が見つけられない死角が無数に存在し、深刻な道迷い(ロスト)を誘発します。さらに、急峻な山岳寺院(焼山寺や鶴林寺など)の登山道は、順打ちで登りやすい傾斜が逆打ちでは危険な下り坂となり、膝や足首の関節に致命的なダメージを与えます。初心者が「ご利益が高いから」という安易な動機で逆打ちを選択することは極めて危険であり、強く戒められるべき盲点です。