太地喜和子の事故死と伝説の真相|奔放な愛と舞台に生きた48年
メディアやネット上では、太地喜和子を形容する言葉として「魔性の女」「奔放な肉食系女優」といったセンセーショナルなフレーズが一人歩きしがちです。しかし、彼女を間近で知る文学座の同僚や演出家たちの証言を丹念に追うと、まったく異なる実像が浮かび上がってきます。
舞台演出家の故・蜷川幸雄氏や共演者たちが口を揃えて語ったのは、彼女の「凄まじいまでの稽古量と台本読解の緻密さ」でした。台本が真っ黒になるまで書き込みを入れ、一言のセリフのイントネーションや呼吸法を何百回も試行錯誤する職人気質の演劇人でした。
また、後輩劇団員に対する気配りや面倒見の良さも特筆すべき点です。稽古場でお金のない若手に食事を奢り、芝居の相談に朝まで付き合うなど、情に厚く飾らない姉御肌の性格でした。彼女が多くの男性や同業者に愛された本当の理由は、外見的な色香以上に、他者の孤独や弱さに寄り添うことのできる深い人間味と誠実さにあったのです。