とと姉ちゃんの結婚相手は誰?星野武蔵と結ばれなかった真相と史実
ドラマの小橋常子の実在モデルである大橋鎭子氏(1920〜2013年)もまた、93年の生涯を通じて一度も結婚することなく、独身を貫きました。
ドラマにおける星野武蔵というキャラクターは、大橋鎭子氏の青春時代における複数の出会いや淡い思い出をモチーフに創作されたフィクションであり、特定の決別相手がいたわけではありません。実際の鎭子氏が生涯独身であった最大の背景には、戦後の出版界に革命を起こした天才編集者・花森安治氏との極めて濃密な同志的絆がありました。
1948年に創刊された『暮しの手帖』において、花森氏が編集長として妥協なき誌面作りと商品テストを指揮し、社長である鎭子氏が経営・営業・資金繰りの全責任を背負って花森氏の才能を全開にさせました。鎭子氏は自著『「暮しの手帖」とわたし』の中で、花森氏との関係性について次のように振り返っています。
「花森さんと仕事をしていると、毎日が真剣勝負で、他のことを考える余裕など全くありませんでした。花森さんの要求する水準に応えることこそが私の人生のすべてだったのです」
花森安治氏には家庭(妻と子ども)があり、二人の間に男女の肉体関係や不倫の事実は一切ありませんでした。しかし二人は、通常の男女の恋愛や結婚という枠組みを遥かに超越した「魂の共鳴者」であり、終生のビジネスパートナーでした。鎭子氏にとって『暮しの手帖』を世に送り出す日常そのものが人生の充足であり、家庭を持つ必要性を感じないほど充実した日々であったことが記録から窺えます。