ウィーン少年合唱団の現在と裏側|日本人入団の条件から寄宿舎の実態まで
合唱団の門戸は世界中に開かれており、国籍や人種による差別は一切ありません。現在では団員の約3分の1がオーストリア国外出身者で占められていますが、入団に至る選考基準は極めて厳格です。
入団の適正年齢は9歳から10歳前後(オーストリアの初等教育第4学年、ギムナジウム進学前)と定められています。オーディションで試されるのは、絶対音感や初見視唱能力、リズム感といった基礎的な音楽スキルにとどまりません。審査員が最も注視するのは「声の可塑性(将来的に伸びる柔軟性)」と、親元を離れて見知らぬ異国の寄宿舎で規律正しく生活できるかという「情緒的成熟度」です。
日本から挑む場合、避けて通れないのがドイツ語の壁です。入団当初は日常会話が覚束ない少年も珍しくありませんが、学校の授業や日々の指導はすべてドイツ語で行われるため、わずか数か月で言語を吸収する適応力が求められます。歴代の日本人メンバーとしては、1990年代に道を切り拓いたパイオニアたちから始まり、近年でもソロパートを任される優秀な少年たちが在籍してきました。彼らを取材した記録や手記によれば、入団当初の孤独感を乗り越えた共通の要因は「音楽を通じた仲間との非言語的なコミュニケーション」であったと語られています。