ニシンの塩漬けは本当に世界一臭い?知られざる誤解と真相を徹底解説

ニシンの塩漬けは本当に世界一臭い?知られざる誤解と真相を徹底解説について押さえておきたい ポイントを分かりやすく解説いたします。

「ニシンの塩漬け=激臭」というパブリックイメージが定着した最大の原因は、スウェーデン伝統料理であるシュールストレミングとの混同にあります。両者の間には、生物学的・化学的に決定的な「加工プロセスの違い」が存在します。

タイセイヨウニシン(アトランティックハーリング)は、魚類の中でも極めて脂肪分が高い魚です。脂肪が多い魚をそのまま外気で乾燥させようとすると、内臓を取り除いたとしても脂質が急激に酸化し、腐敗菌が繁殖して悪臭を放ちます。そのため、北欧や欧州の寒冷地では古来より「塩水漬け」や「塩漬け」による保存が必須とされてきました。

ここで大きな分岐点となるのが「発酵させたか、させていないか」です。

  • 通常のニシンの塩漬け(ハーリングやセリョートカなど):新鮮なニシンを塩水または粗塩に漬け込み、腐敗を抑えつつタンパク質をアミノ酸へと分解させて旨味を引き出したもの。酸敗臭や腐敗臭はなく、新鮮な青魚の芳醇なコクと塩気のみが際立ちます。
  • シュールストレミング:中世スウェーデンの塩不足を背景に誕生した保存食。薄い塩水(約2.5%〜4%程度)に漬けたニシンを樽で初期発酵させた後、殺菌処理を行わずに缶へ密封します。缶の中で極限環境微生物であるハロアナエロビウム(Haloanaerobium)などの嫌気性細菌が増殖し、強烈な酪酸(汗の臭い)、硫化水素(腐卵臭)、プロピオン酸(刺激臭)を生成し続けることで、あの前代未聞の異臭が生み出されます。

つまり、強烈に臭いのは「缶内発酵を続けたシュールストレミング」だけであり、世界中で親しまれている一般的なニシンの塩漬けは、生臭さすら抑えられた非常に洗練された海の幸なのです。

関連記事