野球のショートはなぜ遊撃手?「遊んで撃つ」の語源に隠された衝撃の真相
ネット上の掲示板や知恵袋などでも定期的に話題にのぼるのが、「遊撃手なぜ遊ぶの字を使うのか」という疑問です。日常語における「遊び」を連想すると意味不明に思えますが、漢語の文脈において「遊」という文字は「ゆとり」「どこにも固定されず自由に移動する」「自在に泳ぐ」といったニュアンスを内包しています。たとえば、軍隊において特定の陣地に縛られず機動的に動く部隊を「遊兵」「遊軍」と呼び、艦船が海原を警備しながら航行することを「遊弋(ゆうよく)」と表現します。
この遊撃手の漢字の意味を読み解く最大の鍵こそ、幕末から明治期にかけて多用された軍事用語の遊撃隊です。遊撃隊とは、本隊のように前線で敵とがっぷり四つに組むのではなく、戦局の推移を冷徹に見極めながら、手薄になった敵の側面を急襲したり、味方の危機に急行して援護射撃を加えたりする特殊機動部隊を指します。つまり「遊撃」とは、「特定の待機場所に安住せず、戦況に応じて戦場を縦横無尽に駆け巡り、敵の攻撃を迎え撃つ」という極めて戦略的かつ高度な軍事行動を表しています。
一塁手や三塁手のように「決められた塁(ベース)に足をつけて守る」役割から解放され、二塁と三塁の広大な間隙を駆け回り、時に外野からの返球を中継し、時に投手をカバーする――。その縦横無尽な姿を目の当たりにした当時の知識人が、軍事用語の「遊撃隊」をグラウンド上の守備者に見立てて遊撃手と名付けたのが、この言葉の決定的な出自です。