竹取物語の帝はなぜあごが鋭利すぎるのか?ジブリ作画に隠された衝撃の真相
竹取物語の帝はなぜあごが鋭利すぎるのか?ジブリ作画に隠された衝撃の真相の詳細について、専門知識を詳しくお届けします。
『かぐや姫の物語』の制作期間はおよそ8年、総製作費は50億円を超えると報じられたスタジオジブリ屈指の大プロジェクトでした。人物造形および作画設計を手掛けたのは、高畑監督の厚い信頼を受けていたアニメーターの田辺修氏です。制作ドキュメンタリーや関係者の証言を丹念に追うと、帝のキャラクター造形には明確なコンセプトが存在していたことが分かります。
従来の古典解釈における帝は、神聖にして不可侵、優美な貴公子として描かれがちでした。しかし、高畑勲監督が目指したのは「原作の行間にある人間の生々しい本質」の抉り出しです。作中の帝は、「我が宮中に迎え入れれば、いかなる女も喜ばぬはずがない」という絶対的な特権意識に浸りきっています。かぐや姫の心情を一切斟酌せず、一方的な好意を押し付ける身勝手さ、いわば無自覚なエリートのうぬぼれを観客に直感させる必要がありました。
田辺修氏が描いた極端に尖った顎と浮世離れした細い目は、帝の内面にある「薄っぺらな自尊心」や「ナルシシズム」、そして「権力を笠に着た男の滑稽さ」を露悪的にカリカチュアライズした結果でした。美しい水彩画調の背景と躍動的な描線のなかで、帝の異様な顎の鋭さだけが観客に居心地の悪い違和感を与えます。かぐや姫が反射的に抱いた強い拒絶反応を、スクリーンの前の観客にも等身大の生理的嫌悪として体感させる——それこそが高畑監督の狙いすました演出だったといえます。