英語Good Timesの本当の意味とは?単数形との違いや名曲の真相を徹底解説
「Good Times」という言葉が内包する最も不穏でスリリングな側面を暴き出したのが、サフディ兄弟が監督を務め、ロバート・パティンソンが鬼気迫る怪演を見せた2017年の映画『グッド・タイム』(原題:Good Time)です。
本作のあらすじは、ニューヨークの最下層で暮らす主人公コニーが、知的障害を抱える弟ニックを巻き込んで銀行強盗を企てるところから始まります。作戦は杜撰を極め、弟だけが警察に逮捕され悪名高いライカーズ島刑務所へ送られてしまいます。弟を保釈させるための金を用立てようと、コニーはネオン蠢くニューヨークの夜を奔走しますが、その行動はすべて裏目に出て、事態は破滅的なスパイラルへと転がり落ちていきます。
映画を観賞した多くの観客が抱く疑問が、「なぜこれほど悲惨で救いのない地獄絵図のような一夜に『グッド・タイム』というタイトルが付けられているのか」という点です。その真相は、米国の法執行・行刑制度におけるスラングにあります。アメリカの刑務所において「Good time(グッドタイム)」とは、模範囚として問題を起こさずに過ごすことで得られる「刑期短縮クレジット」を意味します。つまり、社会復帰のための優遇措置という司法制度の専門用語を逆手に取った、痛烈極まりないブラックユーモアなのです。
映画批評の視点からさらに深く切り込むと、ここには家族社会学や心理学で議論される「共依存関係(コ・ディペンデンシー)」と「自己正当化の罠」が浮き彫りになっています。コニーは一貫して「弟を救うため」「弟を愛しているから」という大義名分を掲げますが、客観的に見れば、自立できない弟を自らの情緒的支配下に置き、破滅へと引きずり込んでいるのはコニー自身です。相手を愛しているという名目のもとで相手の人生を消費し尽くす暴力性——これこそが本作が突きつける最も恐ろしい真相であり、「良き時間」を盲信する人間心理の病理を冷徹に描き切っています。
奇しくもこのアイロニカルな構図は、1974年から1979年にかけて米CBSで放送され全米を席巻した伝説的シットコム『Good Times』とも共鳴します。プロデューサーのノーマン・リアらが手掛けた同番組は、シカゴ南部の過酷な公営住宅(プロジェクト)で生きるエヴァンス家の日々を描いた作品でした。貧困、失業、ギャングの暴力といったシビアな社会問題に直面しながらも、家族が笑いと連帯で現実をサバイブしていく姿は、133のエピソードを通じて視聴者の胸を打ちました。過酷極まりない現実があるからこそ、人はそれを「Good Times」と名付け、ユーモアという盾で自らの尊厳を守ろうとするのです。