なぜパサつかない?ささみチキン南蛮が驚くほどジューシーになる下処理と黄金比
鶏ささみは鶏の胸骨に沿った小胸筋にあたる部位で、運動量が少ないため肉質そのものは本来非常にきめ細やかです。それにもかかわらず調理後にパサつきを感じる最大の要因は、脂質が100g中わずか0.8g程度しか含まれず、加熱によってタンパク質が急激に収縮して細胞内の水分を絞り出してしまう「分水作用」にあります。もも肉のように脂質がクッションの役割を果たさないため、火を通しすぎると一気に水分が抜け落ち、パサパサとした食感に陥ってしまいます。
裏を返せば、水分を閉じ込める防御壁を作り、急激な熱収縮を防ぐことさえできれば、ささみが柔らかくなる理由を科学的に再現できます。そのために欠かせないのが、加熱前のわずか3分で完了するささみチキン南蛮パサつかない下処理です。
最初に行うべきはささみ筋取りのコツを押さえることです。無理に包丁で削ぎ落とそうとすると大切な可食部まで削れて肉がボロボロになってしまいます。最も手軽で失敗しない手法は、まな板の上にささみを裏返して置き、筋の端をキッチンペーパーで滑らないよう指先でつまみ、筋を割り箸の隙間に挟むかフォークの背のすき間に押し当てて、身を軽く押さえながら筋だけをスーッと引き抜く技法です。これだけで肉の組織を壊さずに筋のみを瞬時に除去できます。
筋を取り除いたら、厚みのある部分を観音開きにして全体の厚さを均一に揃え、フォークで表裏全体を数カ所刺して筋繊維を断ち切ります。仕上げに「酒(大さじ1)・砂糖(小さじ1/2)・塩コショウ(少々)」を揉み込みます。砂糖の親水性が肉の水分をしっかり抱え込み、酒のアルコールが保水性を高めるため、加熱しても肉汁が流出しません。最後に薄力粉または片栗粉を全体にまぶして水分を閉じ込めるコーティング膜を形成すれば、下処理は完璧です。